雪系男子のゆうちゃん
みーちゃんの登場
結城絢香side>>
残暑が激しい9月上旬。
「はーづがれだーー」
体育の後、女子数人と一緒に、口々に疲労を訴えながら、更衣室から教室までの長い廊下を歩く。
「そういえばさー」
一人がキラキラした表情で、歩きながら振り向く。
「綾瀬くんって、彼女作んないのかな!」
急に出てきたゆうちゃんの名前に、ドキッと反応する。
「あー、たしかに!!私もね〜、振られてからもずっとそれきになるんだよね〜笑」
「え〜、マコも告白してたの〜?私もだよ〜、もう一ヶ月前だけどね〜」
学年の5人に1人にゆうちゃんに告白してる状況からして、この発言は驚きに値するものではない。
「ほんっとに、告白OKしないよねあの人!
他校に好きな人でもいるのかなー」
「げ、その説もありえるね」
私は顔を歪める。
「あ、まさか絢香も綾瀬ファンクラブ入会!?」
「なにそれ!そんなんあるの?」
「ないよ、言ってみただけ。
だって、あんなに不動の存在じゃん??
もはやアイドルじゃん??」
「そうそう、物静かなところもミステリアスでいい!!
何考えてんのか分かんないし!!」
「なんといってもあの美貌!!!
ハスキーボイスに、高身長!!
栗色の髪に、赤リップ!
前髪がかかった切れ長の二重…」
マコがしばらく、夢見るように宙を見つめたかと思うと、
「いや!!たまらん!!!!!」
と頭を抱えて、髪をくしゃくしゃした。
「一回、私ね、目あったことあるけどさ、
直視できなかったもん!!
漫画みたいに、両手で顔隠したもん!!」
はっはっは、わかるーとみんなが激しく同感の意を示す。
女子たちの熱気あふれる言動に、少なからず共感しながら、私もゆうちゃんのことを考える。