雪系男子のゆうちゃん
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「あ"ーー」
「えっ、絢香ちゃんどうしたの。おっさんみたいな声出てるよ」
「やる気でないよーー」
「あらまー…生理前かな?」
「…うるせぇ」
夕方の部活の時間、格技場で道着のまま床に大の字で寝そべる。
美優が顔をのぞいてくるから、ぐるっと寝返りを打って逸らした。
「どうしたの、顧問来ちゃうよ」
「可愛いから照れる。見ないで」
「なにそれ、もっと見ちゃうぞ〜」
美優が四つん這いで、私が寝返り打った方向へ来る。
「…」
「え、本格的にどうかした?なんかあったの?」
美優が首をかしげる。
その純粋そうな目が、オレンジ色の夕日に光る。
「…み…」
「…み?」
…みーちゃん……
と、言おうとして口を紡ぐ。
「次の試合、負けそうだな〜。」
「へへっ、私絶対勝つからね。」
美優も私の隣に寝そべる。
ふわっと甘い、女の子の香り。
「初戦敗退したらどうしよ」
「はぁ?何言ってんの、決勝まで来てくれなきゃみゆが困るんですけど!」
「別に困らないじゃん」
「困るよ!やる気でないじゃん!」
…やる気か〜…
「やる気ださなきゃな〜〜…」
「ほんとだよ〜」
美優がえいっと起き上がる。
そして、こっちを振り向き「ライバルなんだからね!」と笑った。
「……うん」
私も起き上がって、緩んでいた帯をきつく結び直すと、
「…うんっ」ともう一度答えた。