Bad Voice
「わかんないんだ」

何もわからず黙っていた俺に
桃菜が問いかける

俺は黙ったまま首を縦に動かした

「寺坂 春馬 (テラサカ ハルマ) これ聞いてまだわかんないって言えるの?」

俺は桃菜が何を言っているのかは分からなかった
でも、春馬この名前は覚えている
いや、忘れられるはずがない

「はま……」

俺は無意識にこう呟いていた

「そう…はま、寺坂春馬……私の兄」

「え、おまっ!お前今なんて言った!?」

俺は桃菜の放った言葉を
聞き間違いだと思いたかった。

「寺坂春馬は、私の兄だって言ったの」

俺はその場に立ち尽くすしかなかった
泣く事以外何もすることができなかった。
動くことさえ
言い返すことさえ
桃菜を、見る事さえも出来なかった
ただただ、流れてくる涙をこらえる事しか出来なかった



「へぇー、はまの妹さんに出会えるなんて夢にも思てへんかったわ」

太陽が、登校してきた
タイミングでいえば最悪だ

「誰なの?あなた、兄を知ってるの?」

桃菜は、太陽に近づく


「平岡 太陽 君らには 泉 太陽 (イズミ タカシ)の方が分かりやすいんかなぁ?」

太陽が、笑いながら桃菜の肩に手を置いた

「泉 太陽、あなたさえいなければ…っ」

桃菜は、そういいながら
いきなり地面に泣き崩れた


――バンッ――――――

「朝から、ゴチャゴチャうっせぇ
喧嘩すんならよ後ろでやれ俺の前でやんな 邪魔」

机で突っ伏して寝ていた海翔が、
この騒ぎのせいで起きてしまい
桃菜と太陽を睨みつけた

それに、威圧されたのか
桃菜は走って自分のクラスに帰っていった

ほとんどが各クラスに帰ったり
自分の席に座ったりする中で
俺だけはその場から動くことが出来なかった。


桃菜が、はまの妹?
信じられなかった
朝の夢は予知夢か何かだったのか?
そんなことを考えていると動くことなんて
できはしなかった。
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