月の華


いくら強くても、人の死んでいく姿は儚いって感じだった気がする。






「無常観を忘れるでないといくらか言ったはずじゃぞ。」






「はい。」





「ジェミニ。案内してくれるかしらねぇ?」




「構いません。」



ニコニコと微笑んだおばあちゃんはおぼつかない足取りで私と並んで歩き出した。






パテルの病室に着くと、赤髪集団は居なくてマーテルも居なかった。





「龍はガンだとも聞いたんじゃがの」




「その通りです。」




「父より先に逝くのか。」




「龍は幸せでしたかね。」




おばあちゃんはパテルの顔を人撫ですると、唄い出した。






清々しくてさっきのドロドロとした感覚が無くなる。






そして、自然と元気になる。





治す歌姫。クーローディーバの歌声はまだまだ健在だったみたいだ。






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