AI
ver.0,02_『811』
「___起きたね、詩鳥」
瞼を開くと、彼の顔が上にあった。
「....ここは?」
「流歌の家」
「....へっ!?」
徐々に意識がはっきりしてきて、自分が倒れたことを思い出す。
「相瀬先輩の....ど、どうしようロボットくん!!」
「____どうしようって、何かしたいの?詩鳥」
「なっ!何か!?」
「____あぁ、じゃあ....流歌が何時も『使用』してる如何わしい本の位置とか」
「マスター権限行使、No.0811___止まれ」
ロボットくんの動きが止まり、完全に停止する。
「ふぅ...なんとか俺のプライドは守られた」
「い、如何わしい....使用....」
「....ちょっと、遅かったか... !」
「えっと、ロボットくんはなんて呼べば良いかな....」
「____『愛音』でいいんじゃないの?」
「それは、ちょっと....」
「AIだし、アイとか適当で」
「____やだ、安易すぎ」
「贅沢いうな!ぽんこつ!」
「____僕の人工知能モデルは」
「わかったよ!人工知能の癖に贅沢なやつだ」
大きくため息をつく先輩。
懐かしくて、少し笑ってしまった。
相瀬先輩は高校のロボット研究部の部長を勤めていて、有名な人らしく、よく新聞に載っていた。
頭脳的に、外国の学校に行けてしまうレベルだったのに、地元の一般高校に入ったのは『ここじゃなきゃ駄目』だったらしい。
周囲の人たちは、先輩のことを『変わり者』とか『1000年に一度の天才』とか言っていたけれど、実際はロボットが好きで好きで堪らない、普通の先輩だった。
そんな相瀬先輩と私なんかが何故、こんなに親しいのかというと、それは彼が愛音くんの従兄だったからだ。
二人は全く似ていないように見えて、実は結構色んなところが似ていたりする。
だからか、たまに兄弟喧嘩のようなことをしていたけれど。
「....相瀬先輩、ロボットくんのナンバーって何でしたっけ?」
「ん....0811、だけど?」
「...811」
鞄から楽譜用紙を取り出して、隅っこに『0811』と書いてみる。
「....811....8ll...hall....『ハルくん』、なんて...どうかな? 」