不器用な彼と
保健室、ときどき隣
亜紀Side
「…ねぇ、勇気~。ついたよ」
「んっ…」
薄く目を開ける。
本当に綺麗だと思った。
顔はしっかり男の子なのに。
「あれ、…シャツしわ寄ってる」
私の肩を見てクスクス笑う。
「誰のせいだと思ってんのよ」
「わからんぷ~。これ玉ちゃんの真似」
その声に、通路を挟んで隣の玉森先生が「誰か呼んだ?」と携帯から顔を上げた。
玉森先生の金髪に似合わぬ間抜けな顔が面白くて、私と勇気は顔を見合わせて笑った。
気付けば生徒はみんな降りていて、私たちも急いでバスを降りる。
「わっ、まぶし」
きらきらしてる湖。深い緑の山々。白いちぎれた綿菓子みたいな雲たち。
ゆるやかに風が肌を撫でていく。
勇気が私を見ている。気づいてたけど、今目を合わせたらきっと私はすぐ逸らしてしまう。
わざと目を合わせずに、ただ景色を見ていた。