契りのかたに君を想ふ
山南「はぁ…」
最近、入隊して来た男がいた。
その名は伊藤甲子太郎。
平助の恩師であり、剣術はおろか、頭も切れる為に参謀という職に就いた。
参謀は副長や総長よりも上の立場、即ち局長の次に偉い。
彼女がいたらどれほど心強かっただろうか。
しかし今、彼女はこの場にいない。
私の味方も誰一人としていない。
山南「もう、誰も私を必要としてくれないのですね」
剣の握れなくなった私は、この新撰組にいらないのだ。
山南の悲痛な叫びは真っ暗な星の見えない夜空に消えていった。
***
チラチラと舞う雪を縁側で見ながら熱いお茶を啜るのが冬の間の私の日課だ。
昨年の冬は隣に絵美がいてくれた。
だが今、私の隣には誰もいない。
半年近くなっても慣れずに2人分の湯飲みにお茶を注いでしまっている。
井上「絵美、帰って来ておくれよ」
お前は私の妹だろう。
兄から離れるなんて、帰ったらお説教だよ。