契りのかたに君を想ふ
スパンッ
絵美「失礼します」
昔からの癖ってのはそう簡単には直らない。
それを土方は絵美を見て痛感した。
土方「何だ?お前が来るときは大体何か起こるが」
流石。
まだ何も話してないのに既に察しがついている。
絵美「二つほどお話が…」
絵美が敬語を使う事はここんとこめっきりない。
だからよっぽどの事なのか、と土方は気を引き締めた。
絵美「私が未来から来たことが、町人にバレています」
土方「……何?だってそれを知ってるのは俺たちと容保公と慶喜公だけだろ?」
そして坂本龍馬、ね。
絵美「おかしいんですよ。私が話した人たちは皆口が固いのに…」
坂本を除いては。
長州のみんなにも話したがまた彼等も口が固い。
秘密を漏らすような者には伝えてない。
もう一度言うが坂本を除いては。
でもまぁ、別に私としたらそれはどうでも良いのだが…問題は…。
絵美「それにこれは…伊東参謀からお聞きしました」
そう、伊東が知っていたからこそまずい問題。
いくら摩訶不思議な出来事だからと言っても絵美は考え方や髪色が異質なのでやはり探りを入れられてしまう。
そして何よりも"それ"が伊東の中で確信に変わったら絵美は利用されるに違いない。
絵美の一言で頭のいい土方なら事態の重大さが分かったはずだ。
土方「…今は悔しいが何もしようがねえ。出来るだけ伊東に近づくなよ。そしてお前の素性がバレるような言動や行動には充分に気をつけろ」
絵美「承知」
それで、もう一つは?
と聞く土方。
絵美「それは今あなた達が最も悩んでいることだと思います」
土方「……移転か」
絵美「西本願寺?」
土方「流石だな」
ニヤリと口角を持ち上げそう言った土方。