契りのかたに君を想ふ






慶喜「…まぁ、な。だがお前も知っての通り天子様も家茂公もそちらの考えは一切持ち合わせていない」




そう、それが1番の問題だ。




絵美「そうね。でも天子様には長州の素晴らしさを全て伝えると既に宣言しているからそこいら辺は大丈夫!」




家茂公は来年病死されるから多分説得の必要はない。




食い止めたいが病気となれば阻止することは難しいだろうし。




絵美「という事だから、私の薩摩行きの許可を下さい。出来れば新撰組には秘密ね」





慶喜「何故新撰組には伝えぬのだ」




絵美「私が彼等を必要としているように彼等も私を必要としてくれている。その私が彼等の為にしばらく組を離れると聞けばきっと私を止めに来るから」



この話が近藤や土方の耳に入ってしまえば今日中に私は新撰組に連れ戻されるに決まっている。




だから絶対にバレてはいけない。





絵美「お願い、お願いします。1年だけでいいから私を薩摩に行かせてください」




そう言って私は慶喜に頭を下げた。





きっと慶喜の事だから許してくれるに違いない。




そう思っていた。





でも、










慶喜「女子のお前がそのような事をする必要はない。大体、女子のお前に世を変えることなど不可能だ。成功する確率が低く更に詳しい内容を一切知らせないお前を薩摩になんか絶対に行かせない」





的が外れた。



悔しかった。


言い返したかった。



でも慶喜の言っていることが正しいから言い返すことができなかった。




今にも溢れそうな涙をこらえていると












慶喜「と、言いたかったんだかな」






絵美「…え?」





慶喜「俺はお前に賭けてみる。お前の心から信用している新撰組とお前にな。その代わり己の任務は全力で取り組め。一度決めたら途中で辞めることは許さない。それでもいいな?」




絵美「はい!胡桃沢絵美、必ず任務を遂行させます!!」







こうして私の薩摩行きが決定した。






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