契りのかたに君を想ふ






この試合、勝者は明らかだな。





俺と山南さんの踏んだとおりだ。





パァァァンッ





絵美「は?」





永倉「絵美、一本!!」




カランッ カランッ





絵美「嘘嘘嘘嘘!!有り得ない有り得ない!!」




余程信じられなかったのか絵美の手からは竹刀が滑り落ちていた。





絵美「う"ぅ…っ……」





すると突然絵美が頭を押さえながら呻き声を上げた。





永・山「絵美!!!」





絵美はそのまま涙を流しながら気を失った。





山南「案外…絵美は早く記憶が戻るかもしれませんね」




山南さんは絵美の頭を優しく撫でて微笑んでいた。




永倉「山南さん、俺こいつ布団に寝かせてくる」




山南「えぇ、お願いします」





………………………………………





俺は絵美を布団に寝かせると彼女の頬をそっと撫でた。




永倉「なぁ、せっかく目ぇ覚めたのに…何でだよ…」





堪えられなかった。




絵美の上にポタポタと涙が溢れる。




永倉「絵美、俺を選ばなくても良い、誰を選んでも良い。お前が俺達との記憶を…思い出を覚えてくれれば良い。だからっ…、早く思い出してくれよ……」















永倉の悲痛な叫びを聞いている者がいた。



斎藤「………………………」




今の絵美はここに来たばかりの頃によく似ている。



言葉遣い、しぐさや行動、全てが女子らしい。



普通の男ならばこんな女を好むのだろう。



だが俺達、血に飢えた狼達は破天荒でいつもみんなの中心で笑っている絵美が好きなんだ。




俺達が好きな絵美は今やどこにもいない。




何故いつもこいつが苦しまなきゃならない。



絵美は充分苦しんだ筈だ。



そろそろ幸せになっても良いだろ。



絵美、早く戻ってこい。



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