契りのかたに君を想ふ
周りの浪士を含めいい感じに仕上がってきた頃、伊東がおもむろに話し始めた。
伊東「百合さん…私には憎くて仕方がない人がいるんです……」
絵美「うちでよければ聞きますよ。なんでも話しとくなはれ!」
伊東は眉をハの字にさせ少しだけ口角を上げた。
伊東「私は元々新撰組の参謀でした。新撰組に入隊する時、局長の近藤さんに尊皇攘夷の志を掲げるなら入ると言ったんです。なのに入ってみれば公武一和を掲げて新撰組は動いていた」
成る程…思想が違うのになぜ入ってきたのか謎だったがこれでわかった。
彼は近藤さんに騙されていたんだ。
伊東の話はまだ止まらなかった。
伊東「それだけじゃない…。新撰組の主要幹部はみんなあの女の言いなりになってる。あの女さえいなければ私はもっと力を発揮できた。あの女…が…いなければ…新撰組……は…壊滅する……」
そのまま伊東は私の膝の上で寝てしまった。
私は伊東を起こさないよう、そっとその場から離れた。
自分を恨む奴がいるのは当然なんだがやはり直接聞くと足がすくむ。
ドンッ
ヨロヨロと廊下を歩いていると誰かにぶつかってしまった。
絵美「堪忍どっせ」
「………絵美か?」
この声…
絵美「一?!」
斎藤「こんなところで何をやってる!早く屯所へ…」
絵美「土方さんの命で会合に潜入してたの…」
斎藤「じゃあもうわかっただろう。お前は狙われてるんだ。今すぐ戻れ!!山崎はどこだ?!」
シュタッ!!!!
山崎「ここやで」
斎藤「今すぐ絵美を連れて逃げろ。情報は掴んだだろ」
山崎「御意。斎藤はんも気いつけてな」
斎藤「あぁ」
絵美「そうだ、伊東はどうやってこの人数を集めたの?これでも極一部でしょう?全部でどのくらいいるのか、どこの者達が募ってるのか分かったら私か烝、もしくは土方さんに伝えてくれない?」
斎藤「分かった。調べが着き次第報告する。ほら、行け!」
絵美「よろしく!」
私は光の速さで着物と鬘を脱ぎ忍装束に着替えると山崎に続いて暗闇に消えて行った。