契りのかたに君を想ふ
谷は手当もせずに傷だらけの状態で伊東の本拠地へ向かった。
谷の策とは拷問部屋から抜け出し、こちらの情報を伊東に流し込むと言う策だった。
どうか無事に帰って来ますように。
今はそれを願うことしかできなかった。
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山崎「絵美、うまいこと伊東が乗って来たで」
谷が伊東の下へ行ってから三日、伊東は私達の策にまんまと乗っかった。
絵美「なら第二作戦に行きましょうか」
山崎「あぁ。しっかりやりい」
私は山崎と別れると小豆色の少し古ぼけた着物に袖を通し、土方家秘伝の石田散薬が入った籠を背負い、傘を被った。
近藤「済まないな、危険なことばかりやらせて」
絵美「新撰組に危険は付き物でしょう?だからそんな心配しないで」
安心させるようににっこり微笑んで言った。
絵美「監察方、胡桃沢絵美行って参ります!」
これは近藤、土方、山南、山崎、私、他監察方しか知らない極秘任務。
必ず遂行させてみせる。
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谷から教わった伊東の本拠地へ向かうと二人の男が門に立っていた。
絵美「すんまへん、こちらに谷はんはおりますやろうか?」
腰を屈めてできるだけ顔を見られないように尋ねた。
「女、まず名を名乗れ」
「ハナいいます。今日は谷はんに頼まれとった薬を届けに参りました」
そう言うと彼等は私を谷の部屋まで連れて行ってくれた。
絵美「おおきに」
二人にお礼を言うと周りを警戒しながら部屋の中へ入った。
谷「絵美、良かったよ無事で」
絵美「谷さんも体は大丈夫?」
谷「あぁ、手当ても受けて少しはマシになった」
ほら、と肩をぐるぐる回す谷さん。
谷「それと伊東さんは私が新撰組の情報を持って帰って来た事に大分機嫌が良いんだ」
絵美「ふふふ。だから私も簡単に入り込めたのね。あいつがご機嫌だから組織全体が緩くなってるわ」
戦の真っ只中に普通なら女は入れてもらえないだろう。
にも関わらず簡単に入り込みこうして谷の部屋にいる。
案外伊東もちょろいもんだ。
「もしかすると、わざとドブネズミを中に入れたのかもしれませんよ」
突然、襖の向こう側からそんな声が聞こえた。
この声は…