契りのかたに君を想ふ
スパンッ
伊東「お久しぶりですね、絵美さん」
絵美「伊東……」
やはり、声の主は伊東甲子太郎だった。
伊東「谷さん、あなたも新撰組の間者なことくらいとっくに気付いていましたよ」
谷「なら…全てを知った上で策に乗ったふりをしていたんですね。当初の目的…絵美の暗殺を遂行させる為に…」
伊東「ふふふ。気付くのが遅すぎましたね」
伊東のおぞましい笑い声を聞き、思わず身震いをする。
だが、段々と笑いがこみ上げて来た。
絵美「ふふふ…」
思わず声を漏らしてしまうと伊東は訝しげに私の顔を見た。
絵美「こっちだってこの状況に至ることくらい予測済みなのよ」
伊東「…なに……?」
伊東の顔がいびつに歪んだ。
私はカゴの中から苦無を取り出し、伊東を取り巻く男達に構えた。
伊東「一人でこの人数に勝てるとでも?」
絵美「あら、誰が一人だなんて言った?」
私は首元に下がる笛を思いっきり吹くと山崎、島田、林がどこからともなく現れた。
山崎「絵美、ようやったな!谷連れて逃げんで!!」
島田「ここは私と林に任せてください!!」
絵美「ありがとう!」
山崎と谷に肩を貸し素早く伊東の本拠地を後にした。