契りのかたに君を想ふ
それから芹沢の稽古は厳しく涙を流しながら竹刀を握る日々。
掌には豆が出来ては潰れての繰り返しですっかり女らしさを失ってしまった。
斎藤「胡桃沢、芹沢局長は不在のようだから俺が稽古をしよう」
絵美「よろしくお願いします!!」
そして芹沢さんが不在の時はこうして非番の幹部の皆んなが私に稽古をつけてくれている。
斎藤「顎は引き、姿勢は伸ばす。剣先がぶれている」
絵美「はい!」
斎藤「試合をしてみよう。対戦したい相手はいるか?」
斎藤さんからの急な提案。
NOと言えるわけもなく対戦相手を探していると体が凍りついた。
視線の先には絵美を竹刀で殴った男だった。
練習を初めて一月。
芹沢さん達にも飲み込みが良く上達するのが速いとよく褒められていたので勝てる自信があった。
斎藤「10番組の奴か。話してくる」
10番組なんだ…。
斎藤が男の側まで行き話すと彼は二言で了承してくれた。
隊士「ふんっ。お前が相手なら目を瞑ってでも勝てる」
嫌味を言われても気にしない……。
精神統一……。
斎藤「両者構え、始め!!!」
スパンッ!!!
隊士「は?」
絵美「え…」
斎藤「勝者、胡桃沢!!」
あまりの速さに勝った本人ですら状況を飲み込むのに時間がかかった。
隊士「この俺が…負けた……?」
絵美「私……勝ったの?」
原田「絵美、すげえじゃん!」
そう言って私の髪をクシャクシャに撫でまわす原田さんの声さえ右から左へと流れてしまうほど驚いていた。
隊士「胡桃沢…、お前凄いな。一緒に井戸へ行こうぜ。話てえことがある」
そう言って笑った隊士に私は冷や汗が止まらなかった。
絵美「分かり…ました……」