契りのかたに君を想ふ
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チュンチュン
スパンッ
梅「絵美、起きやすっ!……って…あら?」
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ビュンッ ビュンッ ビュンッ
ポタッ ポタッ ポタッ ポタッ
まだ日が昇りきっていない朝の道場に響くのは竹刀を振る音と汗が流れ落ちる音。
ビュンッ ビュンッ ビュンッ ビュンッ
「随分落ち着いてるな」
急に声をかけられ、振り向くと竹刀を肩に担いだ原田がいた。
絵美「原田さん……」
原田「よう!」
絵美「朝稽古ですか?」
原田「まっ、そんなとこかな」
絵美「そうなんですか…」
しばらく沈黙が続くと気まずそうに原田が口を開いた。
原田「……芹沢さんの事、聞いた…」
絵美「…………私、凄く無力ですよね」
原田「………………」
絵美「芹沢さんが暗殺されるのを分かっていて、松平に頭まで下げて粛清の要請を取り消すように頼んだのに……」
原田「……確かにお前は何も出来なかったな。でも行動した事はすげえと思わねえか?」
絵美「え?」
原田「俺、馬鹿だから上手く伝えらんねえけど、人間って言うのは何かを思いついても行動に移す奴は少ねえだろ?だから行動できたお前は凄いんだよ」
絵美「…………………」
原田「これからは芹沢さんを救えない自分を責めるんじゃなくて、行動に移した自分を誇れ」
絵美「…自分を……誇る……」
原田「そういう事だ」
原田さんはそう言うと私の頭をポンポンと撫でた。
原田「じゃあ、俺は行くわ」
絵美「え?原田さん朝稽古しに来たんじゃないんですか?」
原田「やっぱ辞めた!そんなことより絵美、"原田さん"っての止めようぜ」
絵美「え、じゃあ左之助さん?」
原田「左之で良い。敬語もなし!」
絵美「わかった、左之ね」
原田「おう!稽古頑張れよ!俺は新八んとこでも行ってくるわ!」
絵美「左之、ありがとう!」
原田「俺は何もしてねえぞ〜」
絵美「…クスッ」
原田と急に距離が近くなった気がして嬉しかった絵美だった。