契りのかたに君を想ふ
あれから5日が経ち、ここにいられるのも残すところ2日となった。
二条城での生活はきっと裕福なんだろうな。
炊事とかもきっと全部周りの人がやっちゃいそうだし。
外に出る事もあまりなくなるんだろうな。
そんな事を考えている私は今河原にいる。
絵美「あれ?私、土方さんに外出許可取っていたっけ?まぁ良いか」
「女子が一人、こがなげに何をやっちゅうんだ?」
絵美「わっ、土佐弁…だ……」
おい待て。
土佐弁を話すこの長身もじゃもじゃ頭はもしかして……
「土佐弁を知っちゅうのか!いやぁ嬉しいな!儂は坂本龍馬だ!おんしは?」
私…死んでいいですか?
あと2日で二条城に行くって時に…。
絵美「胡桃沢 絵美です」
坂本「絵美かぁ、いい名前じゃのう。そげんことより、おんしは異人かえ?」
絵美「違いますよ。色々な事情があるんです」
坂本「そおかえ、そおかえ。ならその事情とやらを聞いてやるき!さぁ儂の宿へ行くじゃきー!」
絵美「え、ちょ!」
坂本龍馬は私の話に一切聞く耳を持たず物凄い速さで宿へと引っ張られていった。
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坂本「儂は口が固いき!安心して包み隠さず全部話すきに!」
絵美「あのねぇ龍馬さん、私新撰組で女中として働いていて2日後からは二条城に住むの。貴方と私が一緒にいるのを見つかったら大変ですよ?」
坂本「そおかえ、絵美は新撰組の者だったんかえ」
絵美「あ、全く焦らないんですね」
坂本「絵美は言わんじゃろ!」
絵美「まぁ、言いませんけど……」
何なのこの人の余裕は。
絶対目を離しちゃいけないな。
じゃなきゃこの人、速攻で殺される。
こんな普通に街歩いてよく今まで生きてたな。
坂本「絵美の髪色は綺麗じゃのう。異人ではないんじゃろう?」
絵美「はい。私は未来から来たんです」
坂本「そおかえ、そおかえ!そりゃ、凄いき!」
絵美「え、信じてくれるんですか?」
坂本「絵美の目は嘘を言ってる目じゃないき。儂は信じるが!」
この人に皆んなが着いてくるわけだよね。
人を引寄せる力がある。
絵美「龍馬さん、薩摩と長州を同盟組ませようとするんですか?」
坂本「したいとは思っちょるんだが、どちらも石頭じゃき。その話を持ちかけるのも怖くてまだ誰にも言っちょらん。やっぱり絵美は先の世から来たんじゃな」
絵美「えへへ」
しまった。
薩長同盟は慶応2年(1866年)だからまだ3年もある。
絵美「もしそれが上手く行ったらもっと凄い石頭を説得してみませんか?」
坂本「誰じゃき?」
絵美「新撰組です!」
坂本「アッハッハ!それも面白そうじゃ!考えておくき!」
初めは驚いたのか目を見開いていたがすぐに大きく口を開けて笑われた。
絵美「じゃあ私はそろそろ皆んなが心配するので帰ります。また会えたら政の話でもしましょう」
坂本「もちろんじゃ!次会う時は未来の話も聞かせて欲しいき!」
絵美「あはは、分かりました!」
そう言うと私は坂本のいる近江屋を後にした。