契りのかたに君を想ふ
男共の声は聞こえないものとしよう。
春「久しぶりに楽しかったわ」
絵美「私も!ありがとう春!」
春「ねぇ、これだけ強ければ剣ももっと強くなれると思うの。私が稽古を付けてあげようか?」
絵美「良いの?」
雪「絵美、辞めた方が良い。春の稽古は想像を絶する程怖いのよ」
絵美「大丈夫よ。優しい人に柔術や剣術を習ったことはないし、剣術だって今まで新撰組の局長や幹部達に習っていたのよ?」
雪「でも…」
絵美「大丈夫!春、私やるからお願い!」
私が言うと春はニッコリと微笑んだ。
春「途中で辞めるなんて言わせないからね?」
絵美「私が言うわけないでしょう?一度決めたら最後までやり切るんだから!」
春「フフフ、上等ね」
雪「はぁ…、後で泣き付いてきても知らないからね」
慶喜「中々やるな」
松平「新撰組に稽古を付けて貰っていた女子だ。強くもなるだろう」
慶喜「益々アイツを気に入った」
試合を見て慶喜と松平がこんな事を話していた事を絵美は知らない……。
ーーーーーーーーーーーーーーー
絵美「疲れたぁ〜。もう今日はお風呂入って寝る!」
雪「あ、寝る前に慶喜様の部屋へ来るように言われてるから忘れないでね」
絵美「え〜、1人嫌だ!雪一緒に来て!!」
雪「しょうがないわね」
絵美「ありがと〜!」
お風呂から上がると私は雪と一緒に一橋公の部屋へ向かった。
絵美「………………」
雪「…………開けないの?」
絵美「雪が開けて」
雪は溜息を一つ吐くと襖に向かって話しかけた。
雪「慶喜様、絵美様を連れて参りました」
慶喜「通せ」
スーーーー
絵美「失礼します」
慶喜「堅苦しいな。敬語はいらん」
絵美「いえ、土方に叱られるので」
慶喜「構わん」
いや、貴方はね?
私は困ります!
激しく突っ込みたい!!!!!
絵美「ところで何用ですか?」
慶喜「……………」
コイツっ………!
腹立つなコノヤロ!!!!
絵美「……何の用なの?」
慶喜「あぁ、特に用は無いんだかな。暇だったからお前と話をしたかったんだ」
絵美「ちょっと今日は疲れてるんだけど…」
慶喜「で、新撰組はどうだ?」
話を聞けコノヤローーーーーーーっっっ!!!
絵美「……………どう、とは?」
慶喜「京都守護職としての仕事ぶりとか」
絵美「あぁ、幕府に忠誠を尽くしています。彼等は歴史でも最後まで貴方に着いて行きますよ」
慶喜「そうか。あいつらには大分期待出来るな」
絵美「えぇ。でも幕軍には全く期待出来ない者が1人いるの」
慶喜「ほう?誰だ?」
絵美「貴方です」
慶喜「……は?」
絵美「後に起こる戦で将軍、徳川慶喜は戦の最中に逃げ出すの」
慶喜「俺が……か?」
絵美「そう。その戦は幕府軍と新政府軍の戦で新政府が圧勝する。貴方は幕軍が命懸けで戦っている間に逃げ出した。その際に戦意喪失した多くの新撰組隊士が脱走するの」
慶喜「そうか……」
絵美「良い?これから多くの戦が始まる。そしていずれ貴方は将軍になるの。何万と言う幕軍達が貴方の為に戦うわ。その際に貴方は絶対逃げ出してわいけない。そして薩摩を絶対手放さないで。幕府に物凄く貢献してくれるから」
慶喜「いずれ薩摩が敵になるのか…」
絵美「そうならないようにしてください。それから土佐の坂本龍馬。彼は薩摩と長州に同盟を組ませます。そして後に貴方を総理大臣にしようと働いてくれる。彼を絶対に殺さないで」
慶喜「薩摩と長州を組ませようようとしている奴を何故殺さない!!」
絵美「長州藩士の高杉晋作。彼の指揮は新撰組の土方並みに素晴らしいと歴史に残ります」
慶喜「嫌しかし長州は……」
絵美「私がこれからゆっくりと長州の素晴らしさを語るから大丈夫!後々長州が欲しくて欲しくて堪らなくなるから!」
慶喜「一体どこからそんな自身が…」
絵美「と言うか、この話はまた別の日にね。私本当に疲れたの。お休みなさい」
慶喜「添い寝してやろうか」
絵美「結構」
スパンッ
慶喜「中々面白い奴だな」
雪「………私も失礼します」