ビジネスおネエの長谷川君
幸い、声の聞こえそうな範囲にお客さんはいない。


……でも、例え居たとしても構わない。


「1つ聞いていいですか?」


俺は小さく、でも地声で話しかけた。


「あ……れ?」


オオカミ男が戸惑いながら顎に生えている髭を触る。


「浮気はよくないんじゃないんですか?」


「……おネエじゃないんだ?」


お前はいちいち人の話を聞かない奴だな!!


「おネエじゃないです。浮気はよくないですよね?」


「……浮気なんてしてないけど?」


ふふ、と笑う顔は憎たらしいほどいい感じにワイルドで。


してんだろ、今現在、ばーーーーーーーーか!、と、言ってやりたくなるけれど、我慢する。
< 164 / 198 >

この作品をシェア

pagetop