クールな彼の溺愛注意報
「あ、ご、ごめんね。やっぱり、ちょっと怒って……」
「そうじゃ、なくて」
「え?」
「……妬く、から」
手をつないでいて近い距離なのに、聞き取りにくいほど小さな声だった。
でも、ちゃんと聞こえた。
聞こえた言葉に、かあっ、と顔が熱を持ったのを感じた。
とっさになにか言わなくちゃと思ったけど、あわててしまって言葉が出てこない。
気づくと、すでに家の前まで来ていた。
お互いにだまりこんだまま、すっと二宮くんの手が離れる。
……ちがう。
もう、“二宮くん”じゃない。
「あ……葵衣っ」
家の鍵をあけてくれる彼の名前を、呼んでみた。
慣れていない3文字を口にして、どきどきが止まらなくなる。