クールな彼の溺愛注意報




……だれも、いない。


たどってきた閑散とした道路を見つめ、あたしはぞくりと悪寒を感じた。



き……きっと気のせいだよね。

ちょっと、つかれてるのかもしれない。



そう思いなおして、さっきよりちょっとはやいスピードでまた歩き出した。


目はまっすぐ前を見つつ、うしろへと神経をとがらせる。



極力殺した足音が、かすかに聴こえる。

たしかに感じる人の気配。



あたしは歩くスピードをそのままに、ふだんは曲がらない道に入った。



家まで遠まわりになるけど、仕方ない。

ちょっと不安だし、人どおりの多い道を選ぼう。



家を中心にぐるっとまわるようにして、駅前を抜けると、感じていた視線はいつのまにか消えていた。



うしろを振り返って、ほっと息をつく。

なんだったんだろう、いったい……。



気を取り直して、さっきより距離が遠くなってしまった家へ向かう。



 
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