クールな彼の溺愛注意報
「っ、そんなこと、ない」
否定の声が、少しうわずった。
つかまれた手と背後に意識がいってしまい、自分の鼓動の音が大きく聴こえる。
「紫乃」
かくしごとしてることを認めないあたしに、子どもをたしなめるみたいに葵衣がささやいた。
耳元で名前を呼ぶなんて、ずるすぎるよ。
いつから葵衣はそんな小悪魔になったんですか……!
頭の中がてんぱってしまって、そんなばかみたいなことを考えてしまう。
だってこれは、完ぺきに確信犯だよ。
「かくすの下手すぎ。かくしごとするの、嫌いなんじゃなかった?」
「だ、だって……。わざわざ、言うほど、危険性はないと……」
「危険性……?」
……墓穴、ほった。
葵衣が聞き返してきた言葉に、あたしは自分のかくしごとの下手さを呪った。