クールな彼の溺愛注意報
逃げようにも逃げ場がない。
この状況から言い逃れできる言葉すら、用意していない。
つかまれた手をドアからはずされ、体を葵衣のほうに向かされた。
閉じ込めるみたいに、葵衣があたしの体の横に手をつく。
あたしはドアにもたれかかるようなかたちで、葵衣を見上げた。
「言って」
至近距離でささやく声。
心配が垣間見える黒い瞳。
こんなふうに追い込まれて、あたしが葵衣から逃げられるわけがない。
「だ……だれかに、見られてる、気がして」
観念したあたしの、小さな言葉をひろった葵衣が、目を見開いた。
「見られてる……?」
「も、もしかしたら、気のせいかもしれないけど……。
ちょっと不安だったから、人通りの多い道で帰ってきた、だけ」