クールな彼の溺愛注意報
ほら。
こんなこと、わざわざ報告するほどじゃない。
直接なにかをされたとかじゃないし、本当にあたしの気のせいだったかもしれないし。
それに人通りの多い駅前を通ったら、すぐにその視線は消えたんだから。
けれど葵衣は、心配そうに目を細めた。
「いつから?」
「え……今日はじめてだよ?」
「……いや、たぶん数日前から……」
「え?」
ぼそっと葵衣がつぶやいた言葉に、あたしは首をかしげた。
葵衣は少しはっとして、「なんでもない」と首をふる。
それからあたしの前から体をどかせたから、あたしはひそかにほっとした。
ずっと胸に響いていたどきどきが、葵衣に聴かれなかったか不安だ。
葵衣は真剣だったけど、正直あたしは至近距離のせいで、それどころじゃなかった。