クールな彼の溺愛注意報
「そうだけど……なんで?」
「……いや」
あきらかに、なにか言いかけていたのに。
葵衣はなかば無理やり会話を終了させて、カップに口をつけた。
なにか、まよっているような顔だった。
あたしもだいぶ、葵衣の表情の変化にくわしくなった気がする。
なにを考えているかまでは、やっぱりわからないけれど……。
「……じゃあ、あたし先行くね? 鍵お願いします」
先に朝食を終えて、ソファーの近くに置いていたかばんをつかむ。
葵衣に声をかけ、リビングを出ていこうとしたら、「待って」と呼び止められた。
リビングのドアを開いたまま、あたしは葵衣を振り返る。
「どうしたの?」
「……あのさ、」