クールな彼の溺愛注意報
葵衣の真剣な言葉を聞いて、拓海くんが小さくため息をついた。
なんだか……状況を理解したような顔。
当事者であるはずのあたしには、さっぱりわからないのに。
「わかった。うちも紫乃なら大歓迎だし」
「ちょっ、拓海くん!」
本人の意見も聞かずに……!
拓海くんの返事に、葵衣はかすかに安堵の表情を浮かべた。
そして「じゃあ、たのむ」とあたしたちの横を通り過ぎ、正門を出ていってしまう。
「葵衣っ、ちょっと待ってよ!」
当然そのまま見送るなんてできず、あたしは葵衣を追いかけた。
背中に声をかけると、葵衣が立ち止まってあたしを振り返る。
「なんであたしが拓海くんたちの家に泊まることになるの? 説明してくれなくちゃわかんないよ!」
心の中を支配するのは、さみしさと……怒り。
意味わかんないよ。
どうしてあたしは、自分の家じゃなくて他人の家に帰らなくちゃいけないの?