クールな彼の溺愛注意報
お願いというよりは、わがままを言うような声だった。
あたしは肩にまわされた葵衣の腕に、そっと右手で触れる。
すると、ぎゅっと強く抱きしめられた。
「……紫乃がナイフつかんだとき、本気で心臓止まるかと思った」
「ご……ごめんね」
「紫乃に危害がおよばないように、この1週間かかわるの避けてたのに……」
だから……あたしを拓海くんたちの家に避難させたってこと?
そっけなかったのも、あたしを守るために?
そこではじめて、あの帰り道の視線が、なんだったのか理解した。
つまりあたしは、前からあの不良の3人に狙われてたんだ。
いまうわさが流れてるから、てっきり同じ高校の生徒がつけてたのかと思ってた……。
「今回は弱いやつらだったから、まだよかったけど」
「えっ。あの人たち、弱いの?」
「女を人質にとるようなやつはだいたい弱い」
そ、そうなんだ……。
まあ、2年前のことをずっと根に持ってるような人たちだったしね。
あのあと謝罪して引き返していった銀髪の人たちを思い出して、あたしは苦笑した。