クールな彼の溺愛注意報
「そういうの……すげー反則だって、わかってる?」
「は、反則……?」
耳のすぐそばでささやかれて、どきっと心臓が飛び跳ねた。
今日は、これまでになく葵衣と距離が近い。
物理的にも……心も。
どきどきと心臓がさわがしいけれど、やっぱりとても落ち着く。
ほっとしていると、葵衣はしばらくだまってから、「わかった」とつぶやいた。
「怖い思いもさせたし……今日だけ、なら」
「いいの?」
「その代わり、キスだけで止められる自信ないよ」
「……ええっ!?」
耳に直接流し込まれた甘い声におどろくと、葵衣はぱっとあたしの体を離した。
「ばか、冗談だから。……風呂、入ってくる」
「う、い、いってらっしゃい……」
な……なんてこと言うの。
でも、あたし、もしかしてすごくわがままこと言っちゃった?
リビングを出て行く葵衣の背中を見送りながら、
あたしは胸に手をあてて、ずっと鳴っているどきどきを聞いていた。
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