とろけるジャムの隠し味
とろけるジャムの隠し味
告白と粘土細工
「えっ!今、なんて…?!」
目の前で起こった出来事に驚いて、思わず持っていた筆を落っことしてしまった。
水彩色鉛筆と、濃い亜鉛。
大きな窓際の下で散らばった筆。
ささくれのできた広いテーブルに、六月の湿気が漂っている。
美術室の匂いがわずかに残った角の渡り廊下で、北見恵梨はクラスメイトに呼び出されているところだった。
「だから、北見のことが好きなんだ。付き合ってください!」
恵梨の大きな目が点になる。
冷静になろうと深呼吸をして、落とした筆を拾った。
洗ったばかりの筆から小さな雫が落ちる。