とろけるジャムの隠し味
「そんなの明日教室で言えばいいじゃん。わざわざ放課後に呼び出して、本当にそれだけ?」
恵梨は生返事をしながら、洗い終わった筆を窓際に立てかけると、近くに飾られた粘土細工をじっくり鑑賞しはじめる。
「りっこ最近さ、粘土にハマってるよね。あの作品もそうだし。形といい、色といい、センス抜群だよね。」
「ちょっと人の話ちゃんと聞いてんの?
あんな真剣な関くん、初めて見たんだけど。」
「粘土ってさー、自由だからいいよねー!そもそも芸術ってさー、自由だからやめられないんだよねー!」
「…。」
「あたしも粘土やってみよっかなー!!」
明らかに話をそらす恵梨に、律子はボソッとつぶやいた。
「…関くん結構イケメンなのにさ。」
「りっこ!うるさいっ!」
「ひゃー怒られたぁ〜!」
冗談を言う律子の手で、滑らかにかたどられていく粘土細工をを見つめながら、恵梨は一昨年の冬を思い出していた。