とろけるジャムの隠し味
五年越しの恋
小学校から中学校まで、何百回と通った朝の通学路。
空は晴れているけれど、吐く息は白い。
ピンクのマフラーに顔をうずめながら重たい鞄を置いて、恵梨は下駄箱で靴を履きかえていた。
「北見さん、おはよ!」
同じクラスの女子グループが、軽やかに前を通りすぎる。
「おはよ。」
恵梨が小さく返事をした時には、もう彼女たちの姿はなかった。
上履きのかかとを入れると、ポッチャリした足がスカートの裾からまっすぐのびる。
肩まである髪の毛が、暗い表情を更に暗く見せていた。
中学二年の冬、北見恵梨。
身長148cm、体重60kg。
消し去りたい過去、No.1。