とろけるジャムの隠し味

地理の時間が終わって休み時間に入ると、恵梨は次の教科書とノートを用意した。


四時間目は一番お腹が空くけれど、大好きな数学だから集中できる。



お腹がならないように引っ込めておこう。
やっぱり水を飲んだ方がいいかな。


給食までどうやって持ちこたえようか真剣に考えていると、もうお腹が空いてくる。



「ねぇねぇ!
北見さんって陽平のことが好きなの?」



水を飲みに行こうとしたその時、女子三人組から突然話しかけられた。



腹の虫がグウと大きな音で騒ぐのを
かき消すように、恵梨は慌てて返事をした。



「な、なんで知ってるの?」


「えー!!本当だったんだー!!」


何やらキャッキャと話し出す三人。


「みんなで応援するからね!!
頑張って!!」



結局水は飲みにいけないままチャイムがなり、大好きな数学の授業も、なり続けるお腹の音も、全く頭に入らなかった。



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