ツンデレ君の虜。【完】
岬side



イライラする。




俺は地面を踏み鳴らしながら学校へと向かっていた。





原因は…さっきの槙谷と男が一緒にいたこと。





「何なんだよ…!!」





俺にはわからなかった。





なぜ俺は槙谷が男と一緒にいただけでこんなに腹がたつのか。








いつもなら耳障りな雑音も今日はあまり気にならなかった。





それよりも俺は考え事に没頭していた。





それはもちろん…槙谷のこと。





そうしていると、教室のドアが開いた。





入って来たのは…槙谷。





俺は気まずくてつい目をそらしてしまった。





……こんなことするつもりなかったのに。





目の端に映る槙谷は悲しそうな顔をしていた。





俺は何をこんなにもやもやしてるんだ?









とりあえず根本から考えてみた。





そもそもあの男…ここの生徒らしかったが見たことない顔だった。




端麗な顔立ちで…かっこよくて。




周りの女の目を全て奪っていた。





じゃあ…そんなあの男と槙谷の関係はなんだ?





俺はうなずいた。





聞いてみよう。槙谷に。






そしてカバンを置いて帰って来た槙谷に聞いたのだ。





そんな槙谷から返って来た言葉は…





「転校生だよ。」





そんな短い言葉。





「…転校生?その…他に関係はないのか?」





「うーん…私はあいつの案内人?ってことかな。この町のこと教えてあげてるの。」





俺は落胆した。





そんだけの関係かよ…





すると槙谷はクスリと笑い






「そんなに気になったの?ほんとそれくらい他の人にも迫ればいいのに~」




そう言葉を漏らしながら席につく槙谷。




…完璧にこいつ俺をなめてる。




本当にこの間抜けな態度にときどき腹が立つ。








「…俺を好きなら他の男といるんじゃねぇ。バーカ。」








…ふと出た俺の言葉に。




「はっ…はぁっ?!」





顔を真っ赤にして言い訳をしようとする槙谷。





俺はその時、たぶん初めて槙谷のことを可愛く思えた。
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