ココロの記憶


「早瀬さん」


『あ、多谷くん。
今日のステージ出るんだよね?頑張ってね』

笑顔でエールを送る。


「サンキュ。あ、見に来る?」

良輔くんが少し不安そうな顔をして、聞いてきた。


『うん。二人で見に行くよ、ね?』

笑顔で言い、隣にいた愛花に同意を求める。


「うん、行きます」

愛花も笑顔で答える。


その言葉に、良輔くんの表情が少し和らいだ気がした。


『じゃあ、あとで見に行くね』

手を振り、歩き出そうと良輔くん達に背を向けた。


「あ、あのさ…」

焦ったような声で、良輔くんが私を呼び止めた。


『ん?なに?』

振り返ると、良輔くんがズボンのポケットから携帯を取り出して言った。


「携帯、教えてよ」


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