ココロの記憶
第一章
ドックン ドックン
ドックン ドックン
心臓がおかしいくらいに鳴り響いている。
なんにも考えられなかった。
ただ、気が付いたらここにいた。
あの人も、この場所も、あの頃と何一つ変わらない。
今、視界に入るのは綺麗に並べられた自転車。
蛍光灯一つしかない、薄暗いマンションの駐輪場。
コンクリートで囲まれたこの場所は、道路からは死角となる。
悪循環に填っていたあの頃、偶然見つけて毎回逃げ込んでいた。
あの人に見つからない、絶好の隠れ場。
ここは気分を落ち着かせるのに最適だった。
だってここにいること、あの人は知らないんだもん。
でも、彼だけは…