ココロの記憶
『えっ』
「ほら、急ぐよ」
身軽になった身体で、彼と階段を駆け昇る。
教室のある3階に着くと、彼は私の腕の中に鞄を返した。
「じゃあ」
彼はくるりと背を向けて、自分のクラスに向かい歩き出した。
『あ、ありがとう』
慌てて背中に向かってお礼を言う。
彼は早足で歩きながら振り返り、教室を指差して言った。
「遅れるなよ」
彼はにかっと笑い、9組に行くための角を曲がった。
『自分こそ』
もう見えなくなった彼の姿に向かってつぶやくと、すぐ横のドアから教室に入った。
《キーンコーンカーンコーン》
丁度その時、学校中に本鈴が鳴り響いた。