《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
十分に温まった頃、秀馬が一子の手をそっと離した。
「少しは温まったみたいだな」
ーーー手を貸してやったおかげだな。
「はい、ありがとうございます」
「じゃ、送る」
「今日は、まだ早い時間ですから大丈夫です」
一子は、首に巻いたマフラーを外して、爪先立ちになり秀馬の首に引っ掛けた。
「マフラー、ありがとうございます。うちの方が近いですから返しますね」
「もう? 貸してやるから家までして行け」
「でも……」戸惑う一子の首にもう一度マフラーを巻いてやる。
「押し付けがましいか?」
ーーーあまりにも寒そうだから、巻いてやったが……。ひょっとして迷惑だろうか?
「いえ、そんなことは無いです」
首を横にぶんぶん振る一子に秀馬は、無表情で言う。
「じゃ、……気をつけて」
「はい、真田さんも気をつけてくださいね」
「ああ」
一子と秀馬は、別々の路線であるために左右に分かれて歩き出した。
数歩進んだ秀馬は、外から駅構内に入ってくる人のコートやジャケットが、少し濡れているのに気がついた。
ーーーやはり、結構降ってきたのか?