《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「なんか飲むか?」
コートを脱いで、ソファに置くと、キッチンで手を洗い秀馬は、窓から外を眺める麻耶に声をかけた。
「ううん、パーティーへこれから行くのよ」
「随分、遅いな」
「うん、今回は、お忍びで来てるの。だから、目立たない時間に動いてるのよ」
ーーー目立たない? 真っ赤なドレスじゃ返って目立つ気がする。
「夜の蝶みたいだな」
「そうかもね。羽を休めに来たのよ。秀馬の所に」
窓から離れて秀馬の方に歩いてくる麻耶。麻耶は、秀馬の首に両方の腕を絡めた。妖しく秀馬を見つめる。
秀馬は、軽いハグをして麻耶を見つめ返した。
「……俺より会いたい奴がいるんじゃないのか?」
「……そうかもね」
麻耶は、秀馬から離れてフッと微笑んだ。
麻耶が離れると、さっき立ち飲み屋で木の破片が刺さった掌を見る秀馬。
「手、どうかしたの?」
「大したことない。小さな棘だ」
「ダメよ。小さい棘を馬鹿にしたら。秀馬にとって手は命なんだから……大切にしないと……見せて」
秀馬の手を取り、じっと観察する麻耶。
「ツィザーで取れそうよ。ある? ツィザー」
ーーー相変わらず、世話好きだな。
寝室へ行き、棚の引き出しからツィザーを取り出した秀馬は、ソファに背筋を正して座る麻耶の凛とした背中を見つめた。