《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★

「ああ、それか……」

前に一子の首に巻いてやった秀馬のマフラーだった。


「くしゅん」
襟元が相変わらず寒そうな上に、これ見よがしにクシャミまでしている一子。


ーーーこいつ、わざとか?
秀馬は、首を左右に倒して関節を鳴らした。


「寒いのに……。どうせならこのマフラー巻いてくればいいだろ?」

「いえ、返しにきたものを使う訳にはいきませんから」

ーーー妙なところで、律儀だな。

渡されたマフラーを秀馬は、一子の首に巻いてやった。


「あの、これ」

「やるよ。あんたに」

「え、そういう訳には……」
外そうとする一子の手を柔らかくおさえた。

ーーーつめたっ! また、手袋なしか……。

「俺は平気だ。見ろよ」
秀馬は、自分の首の辺りを指差した。
< 124 / 342 >

この作品をシェア

pagetop