《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「……大丈夫です。あの、お腹が……」
「腹が痛いのか? 救急車だな、待てよ。今呼ぶから」
コートのポケットからスマホを取り出す秀馬の手をガシッと掴む一子。
ゆっくり起き上がると、一子は腹をさすった。
「お腹が空いてるだけです。……すみません」
顔を赤くして俯く一子。
「はあ?!」
ーーー嘘だろ? 腹が減ったからって、突然動かなくなるなんて女を見たことが無い。しかも、倒れかけたぞ。瀕死の状態じゃないか。一体、どれだけ食べてないんだよ。
「いつから食べてないんだ?」
「昼からです」
「はあ〜? 今日の昼から? それだけ?」
秀馬は、呆れて一子を見た。
ーーー変わった女だとは思っていたけど、ここまで変わってると。もはや呆れるのを通り越して感心する。
一子の手を掴んで、歩道の端に立ち秀馬は手を上げてタクシーを拾った。
タクシーの後部座席に座り、へなへなになっている一子が秀馬の体にもたれかかってくる。それを避けるために秀馬は、体をシートの前に移動する。
当然、支えを無くした一子は、座席にごろんと横になってしまった。
自分のお尻近くに顔を寄せるようにして倒れている一子を見おろした秀馬は、ため息をついた。
ーーーなんで、腹をすかしたまま俺の所へ来たんだよ。とんだ迷惑だよ。
秀馬は、体の位置を後ろにずらしながら一子の倒れた頭を両手で持ち自分の腿の上に乗せた。