《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「……あの、真田さん……どこへ?」
頭を動かされ、うっすらと目を開けた一子。
「一歩も歩けなさそうだから、タクシーでこの時間でもたくさん食べられる店に連れてく」
「あ、……でも迷惑かけてばかりだから……」
「今更気にするな。俺が勝手に世話してるだけだ」
ーーーそうだ。いつもこいつを何故か勝手に世話する羽目になっている。なんでなんだ?
「……」
全く返事のない一子を秀馬はチラッと見た。
そして、まさかと思いながらも再度確認の意味で一子をじっくり見おろした。
「やられたよ」と秀馬は呟き掌で自分の額をピシャリとはたいた。
一子は秀馬の膝上で、スヤスヤと寝ていたのだ。
ーーーよくも俺の膝枕で、呑気に寝るもんだな。こいつ。やっぱり、きちんと調べてもらうべきだ。絶対にすぐ寝る病気だよな。
秀馬は、呆れたものの一子をそのままにしてタクシーの窓から外を眺めた。
ーーーこいつ、こんな風じゃ……いつか危ない目に合うぞ。
歩の奴は考え直した方がいい。
どこでも寝たり倒れる女が、いい嫁になるとはとても思えないぞ。
そんな風に思いながらも、自分の膝枕でスヤスヤ寝ている一子の顔を見て秀馬は、不思議な気持ちになるのを感じていた。
ーーーなんでなんだ? こんな気持ちになるのは?
胸の真ん中辺りをさする秀馬。
一言では言い表しにくい気持ちが、秀馬の心の中にひょっこりパズルのパーツみたいに現れ出していた。
特徴が無く色も形も微妙にしか違わないパズルのパーツ。
黙って一子を見ていると、それがひとつずつ、収まるべき場所に、はまっていく……。
謎が解けていくような……そんな気分に陥っていくのを、秀馬は静かに感じていた。