《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
バスに揺られていた。秀馬と一子は肩を並べて二人がけの椅子に座っている。
「におうな」
ビニール袋を抱えていた秀馬が呟く。
それを聞いた一子が、くんくんとにおいを嗅いでみると、確かにニンニクみたいなにおいがする。
「 やだ、私はしてませんよ! してませんからっ!」
慌てて誤解しないようにと手を振る一子に、秀馬は苦笑いした。
「してないって? そう慌てるなよ、におうのは、たぶん餃子のにおいだ」
ホッとする一子。
「あ、ああ、なんだ。そりゃそうですよ。だって、餃子だし」
バスの中に何となく餃子のにおいが充満してきているようだった。
「そうだな。あの店の餃子はニンニクが効いてるからな。しかし、あんたがバスを選ぶとは思わなかったなぁ」
「だって、決められないから……電車とタクシーの間をとってバスっていうのもありかと」
「くっ、電車とタクシーの間ね。まあ、あんたらしくて……いいんじゃないか?」
少しだけ笑っている秀馬。
「私らしいですか?」
「ああ、何となく……それっぽいから」
じっと、隣に座っている秀馬に間近で見つめられて一子の心臓は、ドキドキというよりバクバクと耳触りな位に鳴り始めていた。
一子は、秀馬と触れている左肩が妙に気になり、俯き膝に乗せたビニール袋を意味もなく眺めていた。
何となく手持ち無沙汰で、ビニール袋の取っ手を触ってみる。
ガサッとやけに大きくビニール袋の擦れる音がして、一子は更に体を小さくした。
「そういえば、今日会ったときに手が冷たかったよな? もう冷たくなくなったか?」
ふいに伸びてきた秀馬の手。