《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
ーーー抱きしめられてるの? 私。
混乱していた。
頭で何から考えればいいのか、わからなくなっていた。
背中に置かれた歩の手が、ひどく熱く感じる。冷たい頬に触れた歩の冷えた耳。
髪に肩に胸に……歩の体の温かさがじんわりと伝わってくる。
「歩さん……あの」
一子は、自分の胸と歩の胸の間に手を入れた。歩の胸に掌を置く。
ーーーすごいっ……。
歩の心臓が激しく動いているのが、掌から伝わる。見上げた2つの瞳には、どちらを見ても、一子の姿が映っていた。
ーーー歩さん。
「聞こえる? 俺の音」
胸に置いた手を歩が包みこむ。余計に聞こえてくる心臓の鼓動。
ゆっくり頷くと、歩が照れたような笑顔を見せた。
「やばいくらいに、正直だなぁ。俺の心臓」
歩の照れ笑いに、つられるみたいに微笑む一子。