《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
ぎこちない笑顔で歩を見つめた。
ーーー歩さんは、もしかしたら……私のこと好きなの?
「俺の正直な心臓のせいにして……告ろっかなぁ。ホントはさ〜……まだ、そういうつもりなかったんだけどね〜」
笑顔のまま、歩が一子をまっすぐに見つめる。
ーーー告る? やっぱり、歩さんは私なんかのことが好きみたい。どうしよう。
歩の視線を受け止められずに、盛んに視線を泳がせる一子。そんな一子の表情をよんだみたいに歩は
「……今日は、やめとく。一子ちゃんを困らせたくないしね〜とか言ってホントは……まだ自信がない」
少し困ったような顔を見せた。
「自信……」
「うん、今、告ってもOKされる気がしないからね〜」
歩は、改めて一子を柔らかくハグする。
「俺さ、ズルい男なんだよねー。負けそうな試合はしたくないんだよな。だから〜もっと、世間的にも認められる立場になったら、ちゃんと告るからさ〜、その時まで待ってて! 一子ちゃんは、俺に黙って彼氏とか作るの無しだからね?」
十分に格好のいい男から、告白めいたことを言われ、あげくに『彼氏作るの無し』とか言われたら………普通の女子なら胸がドキッとなる。
一子も普通の女子だった。歩にハグされほとんど告白されたも同然な状態に置かれ、極度に緊張してきていたし、ドキドキしていた。
「………………」
ーーーなんて返事すればいいだろ? 何か言わないと失礼かも。何か。
「……か、彼氏なんて……そう簡単には出来ませんよ」
やっと、思いついた味気ない言葉だった。彼氏なんか、もう何年もいない。作りたくても中々出来ないのが、彼氏というものだ。
ーーー歩さんに言われるまでもないよ。彼氏なんか願っても出来ないものよ。