《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
慌てふためく一子を見て歩が笑った。
「ははっ! ほんと、可愛いよね〜。一子ちゃんって」
一子の頭を掌でポンポンする歩。
「可愛いからさ〜心配なんだよねー。実際、秀馬さんだって」
「真田さん?」
ーーー真田さんの名前が、どうして今出るんだろう?
「なーんでもないよ〜……今日は、楽しかったな。ありがとねー、一子ちゃん」
「こちらこそ、ありがとうございました」
手を振りながら駅の中に入っていく歩に一子は頭を下げた。
ーーー何はともあれ、末子の髪も良くなったし、失礼なことばかりで困らせた歩さんも、どうにか機嫌を直してくれたみたいだし。良かった、ほんとに。
歩の姿を見送った後、息を吐いて駅を後にした一子は、かじかんだ手で紺色のマフラーを鼻の辺りまで持ち上げる。
顔をマフラーに埋めると少しだけするシトラスの香りが、不思議と一子を安心させていった。