《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★

ーーー綺麗に…忘れていたのに……。

思い出した所で何の得にもならない。もう、とっくの昔に病気で死んだ父親のこと、そして……馬蹄のブローチ……母親のことを。


「いらっしゃいませ〜」

ドアが開き、中から女が出てきた。

「あっ……」


ーーーまただ! ざんぎり。

「あ、カリスマさん! こんばんは〜」
ニコニコと愛想よく笑う女。


「カリスマさんって……俺は……」
名乗ろうと思ったが、やめた。

ーーー必要ないな。きっと二度と会わないんだから。


「カリスマさん、せっかくだから中へどうぞ」

「いや、俺は……」
女に腕を強引に掴まれた秀馬は、店の中に引きずり込まれていた。



店の中もアンティークな品物がたくさん並んでおり、なんとなく異世界に来たような錯覚を覚える。

天井からぶら下がっていたシャンデリアに背の高い秀馬は、額をぶつけていた。

「わっ! 大丈夫ですか?」
背伸びをして、秀馬の額に手を伸ばす女。

「大丈夫だ。俺に触るな」
秀馬は、冷たく女の手を払った。
< 17 / 342 >

この作品をシェア

pagetop