《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★

少しだけ握られた手に力が加えられていた。

「歩さん、あの……」
歩の気持ちを聞こうと思っていたところで、歩が手を離して、もう片方に持っていた雑誌を開いた。

「あ、コレ見た?」
雑誌をめくり、「あった」といいながら雑誌を見せてくる。



暗がりで抱き合う男女の写真だった。


ーーーこれ、今朝三津子のスマホで見たやつだ。



「これ、秀馬さんだよ。スゲーよなぁ。あの人。こんなニュースになる人なんだぜ」

「この人が……真田さんの好きな人なんですか?」

写真に映る女性を指さして聞いてみた。


「え? あ、うん。そうそう。実際見るともっといい女なんだって秀馬さんのろけてたからね〜」

ーーー体の力が抜けていきそう。

一子は、ぼーっとして写真を眺めていた。

ーーーやっぱり、すべて本当のことなんだ……。雑誌なんかに載ってしまう真田さんは、私とは別世界の人間なんだ。


「一子ちゃん、雑巾落としたよ」
いつの間にか床に落としていた雑巾を拾い上げた歩。

歩が笑顔で再び誘ってきた。
「美味いお好み焼きの店行かない? 豚玉が最高に美味いんだわ。うん」

ーーー力が出ないのは、お腹が空いてるからだ。そうだ。そうに違いない。

一子は、お腹をさすりつつ歩に返事をした。

「行きます。お好み焼き」
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