《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★

帰り道でも続いた「イッタン」攻撃。

「イッタン、寒くない?」

「はい……大丈夫です」一子は、前に秀馬からもらった紺色のマフラーを巻いていた。首をすくめて、マフラーに鼻まで埋まってみる。


ーーー安心するなぁ〜。この香り。


「手貸して」

「手?」

「うん、そお」

一子が出した手を握り、「冷たいな〜」といいながら歩が着ているブルゾンのポケットに一子の手を入れた。


驚いて、見上げた歩の顔。照れたように笑う歩が一子を優しく見おろしている。


「家までこうさせて。俺もあったかいから」


「でも……」



「いや? 俺のこと」
悲しそうな顔されたら、そんなに泣きそうな顔されたら、断われ無かった。


ーーーもちろん、歩さんのことは嫌じゃない。好感さえもっている。


「いやなんかじゃ……」


「じゃあ、今日はお願い! こうさせて」


「今日……だけなら」
悪い気はしてない。それどころかドキドキしている自分も少なからず存在していた。


ーーー私は優柔不断な女だ。

好感を持っている男性から手を取られ、ポケットで温めてもらっている。悲しそうな顔だから、今日だけならと理由をつけてすっかり流されていた。
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