《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
★きずな
★きずな
週刊誌が出てから、カメラマンやテレビ局がまとわりつき、いい加減うんざりしていた。
だが、報道されてから3日たつと嘘みたいに店の前が静かになった。
イケメン俳優の電撃結婚報道があり、人々の興味が完全にそちらにシフトしたらしかった。
それでも念のため、秀馬は窓から外を眺めカメラマン達がいないか確かめてから外にでた。
秀馬が店を閉めてすぐにスマホが、コートのポケットで鳴った。
店の扉の前でスマホを取り出した。
「おい、やってくれたな……」
声の主は、マッツンだ。声のトーンで相手の様子は大体わかる。
ーーー言葉の割に機嫌がよさそうだ。
「なんの話だ?」
「麻耶だよ。すぐにフランスへ帰らなかったじゃないかよ」
月曜日、マッツンと電話で話した時、次の日に麻耶はフランスへ帰ると言っておいた。
そうでも言わなければ、マッツンの重い腰が上がりそうにも無かったからだ。
「ああ、それか……で、渡せたか?」
「渡せたか? なにをだよ」
いつものマッツンの癖が出ていた。相手がしてきた質問を言ってから、自分の嘘の答えを言う。
思わず秀馬は笑っていた。
「ぷっ……渡せたんだな? 全く世話がやける。指輪は、カビたりしてなかっただろうな?」
「それは大丈夫だ。……秀馬……色々とありがとな」
「せいぜい感謝してくれ……ん?!」
明かりの消えた店の階段に小さい人影があった。驚いて暗がりに目を凝らす秀馬。