《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
弾んだ息をととのえ、タクシーから窓の外を眺めた。
暗い空に白い街灯の明かりが流れていく。何度も同じ街灯を見送り、シートに体を沈めた。
少し瞼を閉じて、落ち着こうとしてみた。
ーーー俺は……なんでこんな風になったんだろう。
秀馬は、コートのポケットに入れたままでいたスマホを取り出した。
連絡先に登録してある村山一子の名前。
じっと眺めているうちに、運転手が静かにタクシーを路肩に停めた。
お金を払い、タクシーを降りた秀馬。
スマホの通話ボタンを押して、耳に当て大通りを渡ろうと左右を確認して、ふと視線を止めた。
通りの向こうに、人影が二つ見える。
ーーーあれは……。歩と……
歩と向かい合っているのは、間違えなく一子だ。
道路に一歩踏み出した秀馬の見ている前で、二つの影が重なった。
秀馬の位置からは、よく見えないがキスしているようにも見えた。
耳に当てていたスマホの通話ボタンを切り、スマホを握りしめる秀馬。
秀馬の目には、歩に優しく微笑んでいる一子の赤い顔が見えていた。