《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「あんまり食べ過ぎるんじゃないぞ?」
フッと微笑んだ秀馬が一子の頭に乗せた手を下ろして、一子の頰に指先で触れた。
「リスみたいに、ほっぺたいっぱいに入れるなよな。恥ずかしいから」
「そんなことしません」
「そおかなぁ? まあ、今日は楽しんで」
ガヤガヤしている会場の中で、秀馬は一子の耳元に顔を寄せた。
「俺の同伴者だったら、ずっと一緒にいられたのにな……残念」
言った後で秀馬の唇が、一子の耳たぶに少しだけ触れた。
「!」
びっくりして、秀馬を見上げる一子に秀馬は笑う。
「あんた、驚きすぎだ」
「驚きますよ! 誰だって。こんな人前で……」
耳を触る一子。
「一子ちゃん、ごめん、ごめん。あ、秀馬さん……」
挨拶が終わったらしく歩が一子の元へ戻ってきた。
「おう、歩。忙しいなら、俺が彼女の相手しようか?」
「いえ、もう大丈夫っすから。秀馬さんこそ、こんなところにいないで、大事なVIPのお客様に挨拶しないと」
秀馬が邪魔だとばかりに背中を押し一子から離させる歩。
「歩、さっき電話で言ったけど…」
歩を振り返り、話し始めた秀馬にタックルするように体当たりしてきた人がいた。
「秀馬さん! ここにいたのね。会いたかった〜」
急に現れて秀馬に抱きついたのは、長峰仁美だった。
「お招きありがとう! 仁美、ずっとね、会いたかったの」
「俺は招いてな…」「やっぱり仁美さんと秀馬さんお似合いだよなぁ」
秀馬の言葉に被せ気味に仁美と似合いだと、周りに宣伝すみみたいに大声で言う歩。
抱きついている仁美を離そうとする秀馬。対して仁美は、秀馬にべったりとガムみたいにしがみついて離れ無かった。
「長峰仁美じゃない?」
「わあ、綺麗」
周りの視線を感じ始めた秀馬は、むげに仁美を引き離すのをやめたようだった。
aubuの大事なVIPであり、有名人の彼女に恥をかかせるような真似が出来ないと考えた秀馬は仁美を傍らに置くことにしたようだ。
ちらっと一子を気にするみたいに見た秀馬が仁美の肩を抱きながら、スタッフに何か言われて舞台に上がっていく。
ーーー何、あれ。あんなにべったりして。真田さんも真田さんよ! さっき私に好きだとか言ってキスまでしたのに!
ムッとして、舞台に背を向ける一子。
「それでは、毎年恒例となりました。aubuのクリスマスパーティー開始致しますので、皆さんグラスを持って下さい」
司会者が慣れた口調で話し出していた。
「一子ちゃん、はいグラス持って前向いて」見たくないのに歩にグラスを持たされ前を向くように言われてしまう一子。